失敗しないための「Web制作ヒアリング」のコツ:発注前に準備すべきこと
Webサイト制作のプロジェクトにおいて、成功と失敗の分かれ道はどこにあるのでしょうか?
デザインのセンス? エンジニアの技術力? もちろんそれらも重要ですが、実はプロジェクトの成否の8割は、制作が始まる前の「ヒアリング」で決まると言っても過言ではありません。
多くの発注担当者様が、「とりあえず会って話せば、いい感じの提案をしてくれるだろう」と考えがちです。しかし、制作会社はWebのプロではあっても、「御社のビジネスのプロ」ではありません。
素晴らしいWebサイトとは、発注者様の「ビジネスへの想いや戦略」と、制作会社の「技術と表現力」が完璧に噛み合った時に初めて生まれます。そのために、初回ヒアリングの場で「何を伝えるべきか」を事前に整理しておくことが、失敗しないプロジェクトへの最短ルートとなります。今回は、発注前に準備しておくべき「3つの核心」について解説します。
1. 「何を作るか」ではなく「何を達成したいか(目的)」を明確にする
ヒアリングで最も多い失敗例が、「手段」と「目的」の混同です。
「かっこいいサイトを作りたい」「スマホ対応にしたい」「WordPressを入れたい」。これらは全て「手段」であり、Webサイトを作る「目的」ではありません。制作会社が本当に知りたいのは、その手段を使って**「ビジネス上のどんな課題を解決したいのか」**というゴールです。
例えば、「かっこいいサイトを作りたい」という要望の裏には、次のような全く異なる目的が隠れている可能性があります。
- パターンA: 「競合他社に比べて古臭く見えるため、ブランドイメージを刷新して、若い世代の採用応募を増やしたい」
- パターンB: 「商品の魅力が伝わっておらず、価格競争に巻き込まれているため、高級感を出して客単価を上げたい」
パターンAなら「採用情報の充実と、社員の顔が見える親しみやすいデザイン」が正解かもしれません。一方、パターンBなら「商品写真を大きく使い、余白を活かしたラグジュアリーなデザインと、詳細なスペック表」が必要になるでしょう。
このように、目的(ゴール)が違えば、正解となるデザインや機能は180度変わります。「なぜ、今、Webサイトを作る必要があるのか?」「サイト公開後、どうなっていれば成功と言えるのか?」この「Why」の部分を社内で言語化し、制作会社にぶつけることが、提案の質を劇的に高める第一歩です。
2. 「誰に見てほしいのか(ターゲット)」の解像度を上げる
次に重要なのが、そのサイトを訪れる「主役(ターゲットユーザー)」の設定です。
よくあるのが、「20代〜60代の男女」「初心者からプロまで」といった、全方位に向けたターゲット設定です。しかし、マーケティングの世界には「全員に向けたメッセージは、誰の心にも届かない」という鉄則があります。
ターゲット設定で重要なのは、属性(年齢・性別)だけでなく、**「その人がどんな状況で、何に困っているか(コンテキスト)」**まで想像を巡らせることです。これを専門用語で「ペルソナ設計」と呼びます。
例えば、同じ「車の修理」を探している人でも、以下のように状況は様々です。
- ターゲット像①: 「車に詳しくない主婦。買い物中にバンパーを擦ってしまい、夫にバレる前にこっそり直したい。料金の安さと、怖くない対応を重視。」
- ターゲット像②: 「車好きの30代男性。愛車のカスタムパーツを持ち込みで取り付けたいが、断られる店が多くて困っている。技術力の高さと、話が通じるスタッフを重視。」
①の人には「安心・親切・明朗会計」をアピールすべきですし、②の人には「実績・設備・マニアックな知識」をアピールすべきです。
「誰に(Who)」伝えたいかが明確であればあるほど、制作会社は「その人に刺さるキャッチコピー」や「迷わせない導線設計」を具体的に提案できます。ヒアリングの際は、「当社のメイン顧客はこんな人で、こんな悩みを抱えて来店されることが多いです」という具体的なエピソードをぜひ共有してください。
3. 「競合」と「自社の強み(USP)」を棚卸しする
Webサイトは、インターネットという広大な市場の中で、常に他社と比較され続けています。ユーザーは検索結果に並んだ複数のサイトを次々と開き、「どこが一番自分に合っているか」を瞬時に判断しています。
そのため、「戦う相手(競合)」と「勝てる武器(強み)」を制作会社に伝えることが不可欠です。
- 意識している競合他社はどこか? (「〇〇社のサイトの雰囲気が好き」「△△社は価格が安いが、品質はウチの方が上だ」など)
- 自社だけの売り(USP:Unique Selling Proposition)は何か? (「地域最安値」「創業50年の実績」「他社にはない特殊な設備がある」「対応スピードが早い」など)
制作会社は、教えていただいた競合サイトを徹底的に分析します。「競合は価格を前面に出しているから、御社は『品質とアフターフォロー』で差別化しましょう」「競合サイトはスマホで見づらいので、御社はスマホ体験を最高レベルにしてシェアを奪いましょう」といった、勝つための戦略を立てるためです。
自分たちでは当たり前だと思っていることが、実は他社には真似できない強みであることも多々あります。遠慮せずに、「ウチの良さはここだ!」と熱く語ってください。
まとめ:ヒアリングは「共創」のスタートライン
ここまで「目的」「ターゲット」「強み」の3つを準備することをお伝えしましたが、完璧に整理されていなくても構いません。むしろ、それらが曖昧だからこそプロに相談したい、という場合もあるでしょう。
最も大切なのは、「丸投げ」にするのではなく、制作会社を「ビジネスを一緒に成長させるパートナー」として扱い、対話を重ねる姿勢です。
「Webのことはよく分からないから」と萎縮する必要は全くありません。御社は「自社ビジネスのプロ」です。その知見と、我々制作会社の「Webの知見」を掛け合わせる場こそがヒアリングです。
準備いただいたメモ書き一枚、熱い想い一つが、優れたWebサイトを生み出す種になります。まずは、その想いを私たちにぶつけてみてください。そこから、御社のビジネスを加速させるプロジェクトが始まります。